シラカシという木を、庭のシンボルツリーに選ぼうとしていませんか。
常緑で、目隠しにもなるし、どんぐりもなる。たしかに魅力的な木です。でも、ちょっと待ってください。
私は岩手で庭師をしている者です。この目で、シラカシが引き起こした「ある恐ろしい光景」を見てきました。太い枝が、まるで巨大な手で引きちぎられたかのように、バキバキと折れて、歩道に散乱していたのです。もし、その下を人が歩いていたら……。想像するだけでぞっとします。
「シラカシくらい、植えっぱなしで大丈夫でしょう」
もし、あなたがそう思っているなら、この記事を最後まで読んでください。特に、岩手のような雪の降り積もる地域にお住まいの方には、知っておいてほしいことがあります。適切な剪定と管理をしないと、シラカシは「後悔する庭木」に変わってしまうのです。
この記事では、シラカシがどんな木なのか、なぜ後悔につながるのか、そしてどう管理すればいいのかを、実際の写真とともに、わかりやすくお話ししていきます。それでは、始めましょう。
シラカシとは?まず知っておきたい基本の特徴
まず、結論からお伝えします。シラカシは、魅力の多い木ですが、その魅力の裏返しとして「管理を怠ると手に負えなくなる」木でもあります。
その理由を理解するために、まずはシラカシがどんな木なのか、基本から見ていきましょう。
シラカシ(白樫)はどんな木?
シラカシ(白樫)は、ブナ科コナラ属に分類される常緑広葉樹です。よく公園や街路、庭などに植えられている木で、見たことのある方も多いはずです。
「白樫」という名前ですが、木の見た目が白いわけではありません。むしろ、樹皮(木の幹の表面)は、黒っぽい灰色をしています。では、なぜ「白」なのかというと、木材(木を切ったときの中身)が白っぽいことから、この名前がついたと言われています。ちなみに、材が赤っぽい「アカガシ(赤樫)」という似た木もあり、白樫と赤樫の違いは、この材の色にあります。
シラカシの葉っぱは、細長い形で、ふちにはギザギザ(鋸歯)があります。表面はつやのある濃い緑色で、裏側は少し白っぽく見えます。似た木にアラカシやウラジロガシがありますが、ウラジロガシは葉の裏がはっきり白いこと、アラカシは葉幅が広めであることなどで見分けられます。
常緑樹だけど葉は落ちる?花やどんぐりは?
シラカシは常緑樹です。常緑樹とは、一年中葉っぱをつけている木のことです。ですから、冬でも葉が青々としていて、目隠しの役割を果たしてくれます。
ただし、「常緑樹だから葉が一切落ちない」わけではありません。古くなった葉は、春ごろに新しい葉と入れ替わるように落ちます。ですから、シラカシの落ち葉はそれなりに出ます。「落葉しないと思っていたのに、葉っぱが落ちて掃除が大変」というのは、後悔ポイントの一つです。
花は、春の4月から5月ごろに咲きます。シラカシには雄花と雌花があり、地味な花なので、咲いていても気づかない方が多いです。「シラカシの花が咲かない」と心配される方もいますが、花が地味で見落としているだけ、というケースも少なくありません。
そして秋には、あの「どんぐり」がなります。シラカシのどんぐりは、細長い形をしています。子どもが喜ぶ一方で、地面に大量に落ちると掃除が必要になります。なお、「シラカシにどんぐりがならない」こともありますが、これは木がまだ若い場合や、生育環境によるものです。木が十分に成熟すると、なるようになります。
成長速度が速く、大きくなりすぎる
ここが、最も大切な特徴です。シラカシは、成長速度が速く、放っておくと大きくなりすぎる木なのです。
シラカシは生長が旺盛で、手をかけないと、知らない間にどんどん大きくなります。樹高(木の高さ)は、条件がよければ10メートル以上にもなります。庭に植えたときは可愛らしいサイズでも、数年もすれば、家の2階を超えるような大木になってしまうことも珍しくありません。
「シラカシが大きくなりすぎて困っている」という相談は、庭師をしていて本当によく受けます。この成長の速さこそ、シラカシで後悔する最大の原因なのです。
【衝撃の実例】岩手の大雪でシラカシがバキバキに折れた
ここからは、私が実際に目撃した、シラカシの恐ろしい光景をお見せします。これこそ、管理を怠ったシラカシがどうなるかを示す、動かぬ証拠です。
2020年、岩手を襲った記録的な大雪
2020年、岩手県では12月に毎日のように大雪が降り続きました。
私が住んでいる地域は、普段なら12月はそれほど雪が降りません。降っても、2、3日で解けてしまうのが普通です。ところが、その年は違いました。雪が降り続け、解けずに積もり続けたのです。
私がいつもジョギングしている運動公園で、大変なことが起きていました。いったい何が起こったのか。まずは、この写真を見てください。



バッサバッサと、太い枝が折れています。
これは切ったのではなく「折れた」跡
一瞬見ると、「これは剪定で切った枝を置いているのかな?」と思うかもしれません。しかし、よく見ると、切り口(折れ口)はこんな感じなのです。



ねっ、きれいな切り口ではなく、ささくれて折れているでしょう。ノコギリで切った跡なら、断面はまっすぐで平らです。でも、これはギザギザにささくれています。これが、力ずくで「折れた」証拠なのです。
実際に現場を見ると、それはひどいものでした。シラカシが植えてある歩道脇では、こうした大惨事の状況が、延々と続いていたのです。


まだ折れかかっている、今にも折れそうな枝も、たくさんありました。


これなどは、枝が横にではなく、縦に裂けるように折れかかっています。枝に相当な重量と力がかかって折れたのでしょう。

なぜシラカシは折れたのか?プロが原因を解説
では、なぜシラカシはこれほど無残に折れてしまったのでしょうか。今まで何十年と、こんなことは一度もありませんでした。庭師の視点から、その原因を詳しく解説します。
常緑樹ならではの「葉に積もる雪」の重み
もちろん、直接の原因は雪です。しかし、なぜシラカシがこれほど被害を受けたのか。そこには、シラカシが常緑樹であることが深く関わっています。
順を追って説明します。まず、葉っぱが増えると、枝の先のほうが自分の重さ(自重)でだんだん重くなっていきます。シラカシは、古い葉はそこそこ落ちますが、常緑樹なので、残る葉のほうが多いのです。
この「葉が増える状況」が長年続くと、かなりの量の葉が、枝の先端に固まって増えていきます。剪定をせず放置していると、この「先端の葉の塊」がどんどん大きく重くなるのです。
そこに、今回の大雪です。この葉っぱの塊に雪が積もり、それが解けずにごそっと残る。夜になると、これが凍りついて、その場所にとどまり、さらに重量が増していく。この年は、これが毎日、毎晩、繰り返されました。
落葉樹なら、冬は葉を落としているので、雪はそれほど積もりません。しかし常緑樹のシラカシは、冬でも葉が茂っているため、そこに雪がたっぷり乗ってしまうのです。ここが、常緑樹の弱点です。
どこに負担がかかり、どう折れるのか
こうして雪の重さが限界に達したとき、木が耐えられなくなって、バキッと折れます。これが2週間以上も続いたことで、あの痛ましい状況になったと考えられます。
では、いったいどこに負担がかかると思いますか。
それは、枝分かれした根元の部分や、重量に負ける弱い枝の部分です。
そして、一番枝が折れる可能性が高いのは、どういうときか。それは、木の上のほうで氷のように固まっていた雪の重い塊が、強風にあおられて耐えられなくなり、下の枝に落ちるときです。上から落ちてきた重い塊が、下の枝を直撃して、下の枝まで巻き添えにして折るのです。だから、下のほうの枝が折れる可能性が高くなります。
だから雪国には「雪吊り」がある
こうした雪による枝折れを防ぐために、雪国では昔から「雪吊り(ゆきづり)」という方法が使われてきました。
雪吊りとは、木の上から放射状に縄を張り、傘の骨のように枝を吊り上げて支える技術です。松などによく施されます。これによって、雪の重みで枝が折れるのを防ぐのです。

先人たちは、雪の重さがいかに木にとって脅威かを知っていたからこそ、こうした知恵を編み出したのです。
これは自然災害か、それとも人災か
ここで、私が考える「新しい視点」をお伝えします。今回の枝折れは、本当に「自然災害」なのでしょうか。
私は「半分は人災」だと思っている
原因は雪だけではない、と私は思っています。
これは自然災害の部類かもしれません。しかし、私は半分はそう思っていません。管理を怠り、剪定をしてこなかったことによる「人災」も関わっていると考えているのです。
思い出してください。折れた原因は、「枝の先端に葉が固まって重くなっていたこと」でした。もし、日ごろから適切に剪定をして、枝先を軽くしておけば、これほどの被害にはならなかったはずなのです。
ここは、市が管理する運動公園です。市の管轄ですが、おそらく管理者が、この手の樹木管理や、どんな作業が必要なのかを、よく知らないのかもしれません。毎日見ていても、作業員の方は機械で芝刈りをしているだけで、木の剪定をしている様子はありませんでした。
自然の山に生えている木なら、折れても誰も文句は言えません。しかし、人間が作った公園に、人間が木を植えて、人間と共存している以上、管理をしないといけないのではないか。私はそう思うのです。
放置されたシラカシは人に襲いかかる凶器になる
管理されていないシラカシの怖さは、枝が折れることだけではありません。
このシラカシの枝は、ちょうど人が歩く歩道の上に、覆いかぶさるように伸びていました。もし、人が歩いているときに、頭の上に太い枝が折れて落ちてきたら、ひとたまりもありません。大ケガ、いえ、命に関わります。

しかも、これはひどいと思ったのが、次の光景です。なんと、シラカシの中に、街灯が埋もれてしまっているのです。

街灯が木に埋もれて、明かりが届かない。こうした場所は、1ヶ所だけではありませんでした。必要なところに明かりがなく、その場所は真っ暗です。
夜にジョギングをしていると、暗くて逆走してくる人に、何度ぶつかりそうになったことか。高校生の駅伝の部活も、暗くなってから、かなりのスピードで団体で走ってきます。逆走してくると、本当に恐ろしいのです。木が街灯を隠してしまうことが、こうした危険まで生んでいるのです。

木を植えたら、植えっぱなしではいけない。管理して初めて、木は人と共存できるのです。
シラカシで後悔しないための正しい剪定と管理
さあ、ここからが希望のある話です。シラカシは、正しく剪定・管理すれば、こうした災害を防ぎ、美しく安全に保てる木です。では、どうすればよかったのか、そしてこれからどうすればよいのかを、具体的に解説します。
枝先を軽くする「透かし剪定」が基本
もし、あなたが公園の管理者だったら、あの折れたシラカシをどうすればよかったと思いますか。
答えは、「枝先を長く残さず、葉を空かすような剪定をする」ことです。
このシラカシは樹高が高く、本数も多いので、毎年剪定するのは手間と時間がかかります。それでも、枝先を長く伸ばしすぎないようにし、内部の葉を間引く「透かし剪定」をこまめに行っていれば、枝先が重くなるのを防げたはずです。
透かし剪定とは、枝や葉を間引いて、風通しと日当たりをよくする剪定方法です。これをやっておけば、枝先に葉が固まって重くなることもなく、雪も葉に積もりにくくなります。つまり、雪の重みで折れるリスクをぐっと減らせるのです。
さらに、樹形の内部には枯れ枝もたくさんありました。枯れ枝は、放っておくと病気の原因にもなりますし、折れて落ちる危険もあるので、取り除いたほうがよいです。
こうした基本的な剪定をしていれば、今回のような太い枝が折れる可能性は、ずっと低くなっていたはずなのです。
シラカシの剪定時期はいつがいい?
「シラカシの剪定時期はいつがいいの?」というのは、よくある質問です。
シラカシの剪定に適した時期は、大きく分けて2回あります。
一つは、春の新芽が伸びる前後の時期です。3月から5月ごろ、新しい芽が動き出すタイミングで軽く整えます。もう一つは、9月から10月ごろの秋です。夏に伸びた枝を整理して、冬に備えます。
特に、雪国で気をつけたいのは、冬を迎える前に、枝先を軽くしておくことです。秋のうちに透かし剪定をして、葉の量を減らしておけば、雪が積もりにくくなります。今回の教訓を活かすなら、この「冬前の剪定」がとても大切だと言えます。
大きくなりすぎたときの「強剪定」と注意点
「シラカシが大きくなりすぎた」という場合は、思い切って枝を大きく切り詰める「強剪定(きょうせんてい)」が必要になります。木のてっぺんを切り詰めて高さを抑える「芯止め(しんどめ)」という方法もあります。
ただし、強剪定には注意が必要です。シラカシは比較的丈夫で、強めに切っても芽を吹く力がある木ですが、あまりに一度にバッサリ切りすぎると、木が弱ったり、切り口から腐りが入ったりする「剪定の失敗」につながることがあります。
強剪定を行うなら、木が休んでいる冬(落葉樹ほど明確ではありませんが、生育が緩やかになる時期)を選ぶのが比較的安全とされます。とはいえ、大木の強剪定は高所作業で危険を伴い、切り方にも技術が必要です。自信がない場合は、無理をせず、プロの庭師に依頼することを強くおすすめします。無理な自己流の強剪定で木をだめにしたり、高所から落ちてケガをしたりしては、元も子もありません。
害虫や病気にも注意
シラカシは、害虫や病気にも注意が必要です。
葉にアブラムシがつくと、その排泄物にカビが生えて「すす病」になり、葉が黒くなることがあります。また、幹に「テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)」が入ると、内部が食い荒らされて木が弱ります。枝に「こぶ病」でこぶができることもあります。「シラカシの葉っぱが黄色い」「茶色くなる」「元気がない」といった症状は、こうした病害虫や環境が原因のことが多いです。
夏場は、茂った枝の中にスズメバチが巣を作ることもあります。剪定作業中に刺される事故もあるので、夏の作業では特に注意してください。日ごろから透かし剪定で風通しをよくしておくと、害虫も病気も発生しにくくなります。
まとめ:シラカシは「植えて終わり」ではない木
ここまで、シラカシという木について、長くお話ししてきました。最後に、大切なことを振り返ります。
シラカシは、常緑で目隠しになり、どんぐりもなる、魅力的な庭木です。しかし、その一方で、成長速度が速く、放っておくと大きくなりすぎる木でもあります。そして、常緑樹ゆえに冬でも葉に雪が積もり、岩手のような雪国では、剪定を怠ると太い枝がバキバキに折れる危険がある木なのです。
私が運動公園で見た、あの無残な光景。それは、雪という自然の力だけでなく、「管理を怠った」という人の手落ちが招いた、半分は人災でした。
だからこそ、お伝えしたいのです。シラカシは「植えて終わり」の木ではありません。 こまめな透かし剪定で枝先を軽くし、枯れ枝を取り除き、冬の前には雪に備える。この基本的な管理を続けることで、シラカシは危険な木ではなく、頼もしいシンボルツリーであり続けてくれます。
もし、あなたの庭のシラカシが大きくなりすぎていたり、剪定に自信がなかったりするなら、無理をせず、正しい道具を用意するか、プロの手を借りることを考えてみてください。あなたと、あなたの周りの人の安全を守るために、それは決して惜しい手間ではありません。
木は、人が手をかけてあげてこそ、人と気持ちよく共存できます。シラカシと上手に付き合って、後悔のない庭づくりを楽しんでくださいね。