さくらんぼを食べたら、なぜかノドの奥がイガイガして、かゆくなってきた。
そんな経験は、ありませんか。
「せっかくおいしいさくらんぼなのに、食べるとノドがかゆくなるから食べられない」実は、こうした悩みを抱えている方は、あなたが思っているよりもずっと多いのです。
私も、その一人です。子どもの頃から、ある果物を食べるとノドがかゆくなる体質で、長い間その正体がわからずにいました。「自分の体は変なのかな」と、ずっと不思議に思っていたのです。
ところが、大人になってから、その原因がはっきりわかりました。それは「口腔アレルギー症候群(こうくうアレルギーしょうこうぐん)」という、れっきとしたアレルギーの病気だったのです。しかも、この症状は、あの「花粉症」と深い関係があることも知りました。
この記事では、私自身の体験を交えながら、さくらんぼやメロンを食べてノドがかゆくなる原因、症状が出やすい果物、そして「これは治るのか」「何科に行けばいいのか」まで、わかりやすくお話ししていきます。同じ悩みを持つあなたの、モヤモヤが晴れる手助けになればうれしいです。
なお、私は医師ではありませんので、この記事は一般的な情報としてお読みください。ご自身の症状については、必ずお医者さんに相談してくださいね。それでは、始めましょう。
ノドがかゆくなる原因は「安い果物」ではなかった
まず、私の恥ずかしい思い出話から始めさせてください。この勘違いに、共感してくださる方も多いのではないかと思います。
「このメロン、安いんだな」と思っていた子ども時代
昔から、「安いメロンを食べるとノドがかゆくなる」と、まことしやかに言われていました。
私も子どもの頃、もらい物のメロンを食べていて、ノドがかゆくなってきたことがありました。そのとき、私は心の中でこう思ったのです。
「あっ、このメロン、安物なんだな」
と。かゆくなるのは、果物が安いせいだと、本気で信じていたのです。今思えば、なんとも見当違いな勘違いでした。

歯医者さんでもらったメロンでも、かゆくなった
それから時は流れ、10年ほど前のことです。仕事で歯医者さんにうかがった際、メロンをいただく機会がありました。
すると、そのときもやっぱり、ノドがかゆくなったのです。
私は半分本気で、「歯医者さんでも、安いメロンを食べているのかな?」と疑ってしまいました。まさか、原因が果物の値段ではなく、自分の体のほうにあるとは、夢にも思っていなかったのです。
正体は「口腔アレルギー」だった
そして、つい最近のことです。メロンを食べると、以前よりも頻繁に、そして強く、ノドがかゆくなる感覚が増えてきたことに気づきました。
「これはおかしい。果物の値段の問題じゃない」
そう思って調べてみて、ようやく本当の原因にたどり着きました。ノドがかゆくなるのは、「口腔アレルギー症候群」というアレルギーの病気が原因だったのです。長年の「安物のせい」という思い込みは、ここでようやく解けました。
そして最近では、メロンだけでなく、キウイを食べても、さくらんぼを食べても、ノドがかゆくなるようになってきました。この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら同じかもしれませんね。
他にもある!食べるとノドがかゆくなる果物・野菜
「ノドがかゆくなるのは、メロンだけじゃない」そう感じている方も多いはずです。ここでは、口腔アレルギーの症状が出やすい食べ物を見ていきましょう。
結論として、口腔アレルギーの症状は、実にさまざまな果物や野菜で起こる可能性があります。
私が実際にかゆくなった食べ物
参考までに、私自身が「食べるとノドがかゆくなった」と感じたものを、思いつく限り挙げてみます。
メロン、リンゴ、キウイ、みかん、スイカ、さくらんぼ、レモン、ぶどう、パイナップル、ライチ、グレープフルーツ、バナナ、いちご、もも、トマト、なし、パパイヤ、マンゴー・・・。
こうして並べてみると、本当にたくさんあります。そして、これ以外の果物や野菜でも、人によってはノドがかゆくなる可能性があります。
なぜこんなに種類が多いのか
「どうして、こんなにいろいろな果物でかゆくなるの?」と不思議に思いますよね。
実は、これには明確な理由があります。それは、後で詳しくお話しする「花粉」との関係です。口腔アレルギーは、原因となる花粉の種類によって、症状が出やすい果物のグループが決まっているのです。
そして、複数の花粉にアレルギーがある人ほど、症状が出る果物の種類も増えていきます。だから、人によっては、たくさんの果物でノドがかゆくなるのです。この仕組みを知ると、自分の体で何が起きているのかが、すっきりと理解できますよ。
口腔アレルギー症候群とは?その正体を解説
では、いよいよ本題です。口腔アレルギー症候群とは、いったいどんな病気なのでしょうか。
結論から言うと、口腔アレルギー症候群とは、加熱していない生の果物や生野菜を食べたときに、口やノドを中心にアレルギー反応が起こる、食物アレルギーの一種です。読み方は「こうくうアレルギーしょうこうぐん」で、英語の頭文字をとって「OAS(オーエーエス)」とも呼ばれます。
花粉症と深い関係がある「PFAS」
ここが、この記事で最も大切なポイントです。口腔アレルギーの多くは、実は花粉症と深く関係しているのです。
花粉症の原因となる花粉に含まれるタンパク質と、果物や野菜に含まれるタンパク質。この2つが、とてもよく似た構造をしていることがあります。
すると、どうなるか。体が、果物のタンパク質を「花粉が入ってきた!」と勘違いして、アレルギー反応を起こしてしまうのです。これを、専門的には「交差反応(こうさはんのう)」と言います。
このように、花粉症が原因で起こる食物アレルギーを、特に「花粉-食物アレルギー症候群」、英語の頭文字で「PFAS(ピーファス)」と呼びます。口腔アレルギー症候群(OAS)の多くは、この花粉が原因のPFASなのです。
わかりやすくたとえてみましょう。体の免疫は、いわば「見張り番」です。この見張り番が、花粉という「泥棒」の顔を覚えています。ところが、果物のタンパク質が、その泥棒とそっくりな顔をしているものだから、見張り番が「泥棒が来たぞ!」と勘違いして、警報を鳴らしてしまう。この警報が、ノドのかゆみなのです。
花粉の種類で、症状が出る果物が決まる
面白いことに、原因となる花粉の種類によって、症状が出やすい果物が決まっています。代表的な組み合わせを紹介します。
一つ目は、ハンノキやシラカバ(カバノキ科)の花粉です。これらは春に飛びます。この花粉にアレルギーがある人は、リンゴ、もも、さくらんぼ、なし、びわ、いちごなど、「バラ科」の果物で症状が出やすくなります。日本で一番多いのが、このタイプだと言われています。さくらんぼやリンゴでかゆくなる方は、これに当てはまるかもしれません。
二つ目は、カモガヤなど「イネ科」の花粉です。これらは5月から8月ごろに飛びます。この花粉にアレルギーがある人は、メロン、スイカ、キウイ、トマトなどで症状が出やすくなります。私のようにメロンでかゆくなるタイプは、こちらかもしれません。
三つ目は、ブタクサやヨモギなどの花粉で、メロンやバナナ、セロリなどに反応が出ることがあります。
このように、自分がどの花粉にアレルギーがあるかを知ると、どの果物に気をつければいいかの見当がつくのです。
大豆・豆乳には特に注意
一つ、大切な注意点があります。ハンノキやシラカバの花粉にアレルギーがある方は、大豆製品、特に「豆乳」に反応することがあります。
そして、この豆乳によるアレルギーは、まれに呼吸困難やじんましんといった、全身の強い症状につながった報告もあります。「果物だけでなく、豆乳でも口がかゆくなる」という方は、特に注意が必要です。
口腔アレルギーの症状と、気をつけるべきサイン
では、口腔アレルギーになると、具体的にどんな症状が出るのでしょうか。ここは、健康に関わる大切な部分なので、しっかりお伝えします。
結論として、多くの場合は口やノドの軽い症状で自然におさまりますが、まれに全身に強い症状が出ることがあり、その場合は注意が必要です。
よくある症状と、その持続時間
最もよくある症状は、食べ物を口にした直後から起こる、口の中やノドの違和感です。
具体的には、唇や舌、口の中、ノドのかゆみ、ピリピリした刺激感、イガイガ感などです。食べてから、だいたい15分から1時間以内という短い時間で症状が出るのが特徴です。
うれしいことに、これらの症状の多くは軽く、しばらくすると自然におさまっていきます。原因となる果物の成分は、消化されたり時間が経ったりすると影響が弱まるため、症状が長く続くことは少ないとされています。ですから、ほとんどの方は、その果物を食べるのをやめることで、症状と付き合っています。
加熱すると食べられることがある理由
もう一つ、知っておくと役立つのが、「加熱」の話です。
口腔アレルギーの原因となるタンパク質は、熱に弱いという性質があります。そのため、生で食べると症状が出る果物でも、加熱調理すれば食べられることが多いのです。
たとえば、生のリンゴを食べるとノドがかゆくなる人でも、リンゴのジャムやアップルパイなら平気、ということがよくあります。加熱によって、アレルギーの原因となるタンパク質の形が変わり、体が反応しなくなるからです。「生はダメでも、火を通せば大丈夫かも」というのは、覚えておくと役立つ知識です。
見逃してはいけない、重い症状のサイン
ここからは、とても大切な注意点です。口腔アレルギーは、多くは軽症ですが、ごくまれに、重い症状が出ることがあります。
具体的には、吐き気や胃の不調、じんましん、さらに進むと、ノドや胸の圧迫感、呼吸が苦しくなる、嘔吐、下痢などです。そして、ごく少数ですが、非常に重い場合には、血圧が下がって意識を失うような、命に関わる重い反応が出ることもあります。この、全身に及ぶ激しいアレルギー反応を「アナフィラキシー」と呼びます。
もし、口やノドのかゆみだけでなく、息苦しさや、じんましんが全身に広がる、気分が悪くなるといった症状が出た場合は、決して様子見をせず、すぐに医療機関を受診してください。特に、呼吸が苦しいときは、ためらわずに救急車を呼ぶことも必要です。
ほとんどの場合は心配のいらない軽い症状ですが、こうした「もしものサイン」を知っておくことは、自分の身を守るためにとても大切です。
口腔アレルギーは治るの?何科に行けばいい?
さて、悩んでいる方が一番知りたいのは、「これは治るの?」ということでしょう。そして、「病院に行くなら何科?」という疑問もあるはずです。
正直なところ、体質なので簡単には治りにくい
まず、正直にお伝えします。私個人の実感としても、また一般的にも、口腔アレルギーは体質に関わるものなので、「すぐに、完全に治る」というものではないようです。
アレルギーは、体の免疫の反応です。その根本にある花粉症の体質が変わらない限り、果物への反応もなくなりにくい、というのが現実です。ですから、基本的な対処法は、「症状が出る果物を、生では食べないようにする」ことになります。
「好きなさくらんぼが食べられないなんて、悲しい」と思うかもしれません。私も同じ気持ちです。でも、無理をして食べて重い症状が出ては、元も子もありません。まずは、自分が反応する果物を知り、それを避けることが、一番確実な対処法です。
希望もある ― 治療で症状を抑えられる可能性
とはいえ、あきらめる必要はありません。希望のある話もあります。
先日、私が花粉症の薬をもらいに耳鼻科に行ったとき、その病院では口腔アレルギーの治療もしている、という話を聞きました。
くわしくは専門家でないとわかりませんが、花粉症の症状を薬で抑えられるのと同じように、口腔アレルギーも、薬や治療である程度コントロールできる可能性があるようです。アレルギーの薬(抗ヒスタミン薬など)で症状を和らげたり、根本にある花粉症に対して「舌下免疫療法」といった体質改善を目指す治療を行ったりする方法が、研究・実践されています。
医学は日々進歩しています。原因となる物質の研究や、新しい治療法の開発も進められているそうです。ですから、「一生このまま」と決めつけず、専門家に相談してみる価値は十分にあります。
何科を受診すればいい?
「病院に行くなら、何科?」という疑問にお答えします。
口腔アレルギー症候群を診てもらえるのは、主に、アレルギー科、耳鼻咽喉科、皮膚科、内科などです。花粉症も関係しているので、花粉症で耳鼻科に通っている方は、そのついでに相談してみるのもよいでしょう。
病院では、どの花粉やどの食べ物にアレルギーがあるかを調べる血液検査などを受けられることもあります。自分の体質を正確に知ることは、日々の食事で何に気をつければいいかを知る、大きな助けになります。検査の内容や費用は病院によって異なるので、受診前に問い合わせておくと安心です。
まとめ ― 正しく知って、上手に付き合おう
ここまで、さくらんぼやメロンを食べてノドがかゆくなる「口腔アレルギー症候群」について、私の体験を交えながらお話ししてきました。最後に、大切なことを振り返ります。
ノドがかゆくなるのは、果物が安いからでも、あなたの体が変なのでもありません。それは「口腔アレルギー症候群(OAS)」という、れっきとしたアレルギーで、その多くは花粉症と関係した「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」です。花粉と果物のタンパク質が似ているために、体が勘違いして反応してしまうのです。
症状の多くは、口やノドのかゆみで、しばらくすると自然におさまります。生でダメでも、加熱すれば食べられることも多いです。ただし、まれに全身に重い症状が出ることがあるので、息苦しさなどのサインには十分注意してください。
そして、体質なので簡単には治りにくいものの、薬や治療で症状を抑えられる可能性はあります。気になる方は、アレルギー科や耳鼻咽喉科などで相談してみてください。
長年「安物のせいだ」と思い込んでいた私にとって、原因がはっきりわかったことは、大きな安心につながりました。正体がわかれば、あとは上手に付き合っていくだけです。自分が反応する果物を知り、必要なら加熱して楽しみ、心配なら専門家に相談する。そうやって、果物のある暮らしを、無理なく楽しんでいきましょう。
同じ悩みを持つあなたが、この記事で少しでも気持ちが軽くなり、そして一度お医者さんに相談してみようと思ってもらえたなら、これほどうれしいことはありません。
なお、この記事は一般的な情報をまとめたものです。症状の程度は人それぞれ違いますので、ご自身の症状が気になる場合は、自己判断せず、必ず医療機関で相談してくださいね。